音楽科授業におけるICT活用の意義と効果的な実践
「小中高をつなぐ音楽科ICT講座」

実践例②

■音楽科の目標の実現に向かうGIGAスクール構想のもとでの授業 初等教育資料 2025年8月号

特集  各教科等の目標の実現に向かうGIGAスクール構想のもとでの授業①

文部科学省初等中等教育局視学官 志民一成先生

ポイント

「主体的・対話的で深い学びの実現」に向けた授業改善の視点のうち、特に「深い学び」の視点に着目
その鍵となるのが「音楽的な見方・考え方」を働かせること

「音楽的な見方・考え方」とは…音楽に対する感性を働かせ、音や音楽を、音楽を形づくっている要素とその働きの視点で捉え、自己のイメージや感情、生活や文化などと関連付けること」(『小学校学習指導要領』(平成29年告示)解説 音楽編)

音楽を形づくっている要素とその働きの視点で捉えるとは…[共通事項]アで示されている、音色やリズムなどの音楽を形づくっている要素を聴き取るとともに、音楽を形づくっている要素を思考・判断のよりどころとしながら考えることが必要がある。

■リコーダーのタンギングを可視化して確認し、音色と演奏の仕方との関わりに気付く

小学校第3学年 音楽 「こんにちは リコーダー」
【協力】広島市立鈴張小学校
【活用したソフトや機能】スペクトログラム(Google MusicLab)

https://www.mext.go.jp/StuDXStyle/20250620-mxt_kyoiku01-000015485_1.pdf

【当該指導での「深い学び」】

タンギングをして音を区切って吹くことができるようになるためには、まず、タンギングをした演奏とタンギングをしない演奏の違いを聴き分けられるようになることが必要である。スペクトログラムを活用してタンギングによる音の変化を可視化することは、その違いを聴き分けることの助けになる。子どもたちは教師の範奏の特徴を耳と目で確認し、それに近付くために端末を活用し、自分の演奏を視覚的に確認しながら試すことで、音色と演奏の仕方との関わりに気付いていった。

■端末で自分の担当するパートの音を消した音源を聴き、パートの役割を考える

小学校第5学年 音楽 「曲想を感じ取って表現に生かそう」
【協力】東久留米市立第五小学校
【活用したソフトや機能】カトカトーン

【当該指導での「深い学び」】

合奏譜(スコア)を見ると横方向に各パートが示され、縦にパートが重なっていることが分かる。パートの役割を意識して表現を工夫することは、すなわち音楽の縦と横との関係をよりどころとして、どのように演奏するかについて思考・判断していくことになる。特定のパートだけ消すという、いわゆるマイナスワン機能によって演奏をシミュレーションすることで、パートの役割について実感し、それを根拠に表現を工夫していくことにつながっている。

https://www.mext.go.jp/StuDXStyle/20250620-mxt_kyoiku01-000015485_3.pdf

■共通するのは音・音楽の可視化

カトカトーン」なども音楽づくりに活用するだけではなく、音・音楽の可視化のためのツールとしても活用できる。