ICT Music Session

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ICTに対する現場教員の声を聞くA(2016.2)

今月は、女性教員の皆さんのICT活用に関する抱負について、教員免許状更新講習の際に書いていただいたレポートをもとに報告します(音楽室のICT環境への不満については、先月号を参照してください)。

講習会の内容

この夏、私が勤める京都女子大学で開催された教員免許状更新講習「からだ・電子機器と音楽教育―異なる面からのアプローチ―」。午後の部「電子機器」を担当した私は、この連載の前半5回分と、“一人1台端末”によるリコーダー反転学習(第8回)を基に、映像などを交えながら話を進めました。
なかでも、『音楽室のICT化を考える』(第5回)については、「ノートPC・タブレットPC(教員用)+プロジェクター+スクリーン+高速通信回線」を実際に体験できるようにし、「オンライン音楽室」(2001)の2部合唱教材、現在の韓国のデジタル教科書、いくつかのiPadのアプリやそれらを使った実践などを紹介。また、学校の音楽室にない楽器の音を出せる電子楽器として、私のゼミ生の二人が電子ドラム、電子打楽器Hand Sonic(Roland)を演奏しました。
フロアにいた受講者の皆さんが私の説明やデモンストレーションに影響を受けた可能性はもちろん高いですが、ICT活用に関する抱負として次のようなものが挙がりました。

  • 未就学児二人がiPadでギターと効果音を担当する(深見友紀子ミュージック・ラボ コンサートでのアンサンブル 2015年7月)
  • 幼・保の先生方は音楽再生・編集アプリと電子楽器

まず幼稚園・保育所の先生方からは、「スクリーン(映像)をもっと日常の保育に使用したい」、「Anytune(Anystone Technologies, Inc.)などによってテンポや調性を子どもたちに合ったものに編集したい」、「園での練習だけで楽器演奏や歌、ダンスをマスターするのは難しい。“一人1台端末”は無理ですが、お手本映像をブログやYouTubeにアップロードして、家庭でも少し練習できるようにしたい」。さらに、「乳幼児向きの知育アプリにもよいものがあることを知ったので、さっそく1・2歳クラスで使ってみたい」、「予算が許せば、電子ドラムや Hand Sonicを購入したい」といった抱負が寄せられました。
音楽再生・編集アプリと電子楽器は、特に幼稚園・保育園の先生方に人気が高いようです。また、乳幼児向きの知育アプリに可能性を感じた特別支援学校の先生もいらっしゃいました。

小学校の先生方はデジタル教科書や鑑賞アプリ、反転学習

一方、小学校の先生方の場合は、デジタル教科書(「オンライン音楽室」と韓国デジタル教科書)やオーケストラ鑑賞のためのアプリである「The Orchestra」(Touchpress  Limited)、リコーダー反転学習に関心が集中していました。

平成12年度文部科学省教育コンテンツ開発事業の一つである「オンライン音楽室」は、もう15年も前に制作され、現在はネット上から消えているものですが、そのコンテンツの一つである合唱指導のための教材は非常に優れています。このようなレベルの教材があれば、先生の指導力の差をカバーするというデジタル教科書本来の目的の一つが実現することでしょう。

「The Orchestra」については、「オーケストラの仕組みやそれぞれの楽器の特徴がわかるので、『音楽鑑賞教室』の前に見せたい」、「楽器画像の回転や、映像とスコアの同時視聴など、今までの DVD教材では(オンデマンドで)できなかったことが可能になったのがすごい。さっそく試してみたい」、「学校向けのアプリではないが、教材研究すれば授業でも使えると思うので、やってみる」といった意欲的な先生もいらっしゃいました。でも、やはり学校向けにカスタマイズされたアプリの開発が待たれますね。

反転学習に関しても前向きなコメントが目立ちました。「学校の音楽室でしか観ることができないDVD教材との差は歴然」、「授業時数が削減されている音楽科ではとても役立ちそう」、「保護者や家族が学校の音楽の授業でやっていることがわかるのでよい」などが主な理由として挙げられています。

日常の道具を学校や園でも使うだけ

「できるところから少しずつ授業で取り入れたい」、「せっかくタブレット PCやスマートフォンがあるのに音楽活動で使わないのはもったいない」。……こういった気持ちが今女性教員の間に起こりつつあるようです。日常生活で使っている道具を学校や園でも使うということなので、企業や文部科学省などが先導し、学校に入ってきた80年代の電子楽器、90年代のDTM、00年代の遠隔授業とは状況が違いますね。

一般的に女性は電子機器に弱いといわれていますが、女子大の教員をしている私は、今の若い女性たちが飛躍的に変わってきていることに気づく機会があります。これまで電子キーボードで「絵本」に音楽・音を付けてきた演習において、今年度は4台のスマートフォンを駆使するグループが出てきました。また、私が担当する音楽ゼミの卒業研究は webページとしてまとめています。現役の女性教員の方々が少しだけ努力して音楽活動のICT化に取り組んでいただければ、次の世代の女性は必ずそれを大きくしていくことができます。
とても楽しみですね。

絵本に音楽・音をつける活動でスマートフォンを駆使する(京都女子大学 2015年 11月)

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