月刊ミュージックトレード(ミュージックトレード社)に連載した
コラムのバックナンバー

2004年8月
初めての公開講座 IN 京都
深見友紀子(Yukiko FUKAMI)

 七月四日、「音楽ゲームで遊ぼう〜ボディパーカッションと電子楽器」というタイトルの講座を開いた (京都女子大学発達教育学部児童学科公開講座、音楽棟音楽演奏ホール) 。ボディパーカッションのプログラム進行はゲスト講師の小泉恭子さん(愛知教育大学助教授)にお願いして、私は合間のエレクトーン演奏とクイズコーナーなどを担当した。ボディパーカッションとは、山田俊之さんという小学校の先生が全国的に広めたリズム遊びである。

 受講の呼びかけは、講座の三週間前に府下の保育園・幼稚園に送ったDMと新聞広告によって行った。この時点で、私は断らなければならないほど多くの申し込みがあると楽観していた。しかし、蓋を開けると申し込みハガキはたった二通。ちょうどその頃季節はずれの台風が来たので郵便配達が遅れているのではないかと期待したが、待てども一向に届く気配がない。同時開催の心理カウンセラー、大辻隆夫さんの講座にはすでに約三十通届いていると聞き、「これはヤバイ」と必死になった時には、後十日しかなかった。

 赴任早々の京都には声をかける知り合いもまだほとんどいないので、同僚の荒川恵子さん(音楽学者)の紹介で、附属小学校・幼稚園、京都教育大学附属小学校に勧誘に行った。荒川さん自身も友人に声をかけてくれた。(この人の友達の輪は本当にすごい! ) とにかく人を集めなければという思いから、当初設定していた「原則として四歳以上、小学校低学年まで」という年齢制限もなし崩し的に撤廃することに・・・。こうした形振り構わない勧誘の結果、講座の二日前には予定定員の親子四十組を優にオーバーすることができたのだ。ヒヤヒヤの一週間、私はエレクトーンを練習する余裕もまったくなかった。

 当日は、年齢別に四つのグループに分かれ、私のゼミ生四人がそれぞれのグルーリーダーになり、互いに面識のない子どもたち同士がホールのステージでセッションを行うことになった。リハーサルは無し。年齢別にグループ分けをしたものの、四歳と小学校高学年の子どもが同時進行でやるのは非常に難しく、次々にプログラムをこなしていくというやり方では、幼稚園児にはテンポが速すぎたし、反対に年上の子どもたちには物足りなかったと思う。また、参加者が少人数で同い年の幼児であれば、保護者にサポートとして入ってもらうことも可能だが、年齢がバラバラではそれも難しく、結局見学してもらうだけになった。子どもと一緒にやるつもりで来た保護者の中にはがっかりした人もいただろうし、ステージを使うのならば、音楽発表会みたいな形式のほうが良かったに違いない。「大学として子どもの音楽活動に関するデータが欲しかったのか」というアンケートの感想を読んだ時はさすがにめげた。

 小泉さんにとっても、ある小学校の一つのクラスとか、保育士とかが対象だったほうがずっとやりやすかったと思う。前者ならば当日までに何ステップかの準備段階を設けることができただろうし、後者ならば、日々の仕事に生かしたいという意欲のある人が参加しただろう。楽器メーカーや学会、NPO法人などが主催する講座で成功しているものの多くが、こういった類である。

 私がエレクトーンを使ってやったイントロクイズに対しても「曲名を正確に求めたのには意味があったのか?僕が担当なら、『迷子のおまわりさん』で大正解」といった指摘があった。私は別段正解を求めていたわけではない。「近い」「惜しい」といった働きかけをすることによって、"犬も歩けば泥棒に当たる"みたいな言葉遊びが生じ、和気あいあいとした空気を作ることができたと、どちらかというと自分では満足していたので、再び大いにめげてしまった。

 でも、少し考えるとわかることだが、もし、音楽経験もバラバラの不特定多数の子どもたちを集めて、音楽鑑賞会ではなく、大楽器祭のような体験イベントでもなく、リサイクル素材で楽器を作る工作教室でもないイベントができたら、文句なく凄いことだ。私はまだこれからだ!!と自分に言い聞かせて、すぐに立ち直ることにした。

 ちょっと驚いたことを一つ。それは、今回「できるだけ長い音を出そう」という活動で使用したカワイのメロディーベル(ハンドベル)のモテぶりだ。人気のヒミツは、そのカラフルな色にある。そして、なぜか子どもたちの間ではブルーが一番人気らしい。これまで私はこの楽器に興味がなかったが、今回の講座の予算で五セットも買ったので、メロディの分担奏以外の用途も少しずつ考えていきたいと思う。ちなみに私はオレンジ派である。

 セッションの合間のエレクトーン演奏はおかげ様で概ね好評。人前で弾くことはほとんどないので"華麗なプレイヤー"には程遠いけれど、エレクトーンの普及・啓蒙という意味では役に立てたかもしれない。

top > プロフィール > 月刊『ミュージックトレード』に連載したコラムのバックナンバー > 2004年8月

Valid XHTML 1.1 Valid CSS!